2020年11月27日(金)開催 於:学士会館

ー住木・梅澤記念賞及び奨励賞 授賞式、受賞講演並びに特別講演ー

住木・梅澤記念賞 授賞式

(左)東京大学大学院農学生命科学研究科
 応用生命工学専攻
 講師 西村 慎一 先生
(右)理事長 岩田 敏 先生 

住木・梅澤記念賞 授賞式

奨励賞 授賞式

(左)聖マリアンナ医科大学微生物学
 助教 大神田 敬 先生
(右)理事長 岩田 敏 先生

奨励賞 授賞式

住木・梅澤記念賞 受賞講演
生体膜を標的にする抗真菌化合物の探索と作用機序に関する研究

西村 慎一 先生

(要旨)天然物は合成化合物を上回る化学構造の多様性を示し、これまでに50万の化合物が報告されたともいわれる。そのような天然物を対象に、真菌の生体膜脂質を標的にする化合物の探索と作用機構解析を行い、3種の化合物 (1)ヘロナミド、(2)5aTHQ類、(3)セオネラミドについて作用メカニズムを解明した。天然からは生体膜を標的にする多様な化合物が見出されているが、3種の化合物はいずれも全く新しい分子メカニズムを有していた。天然物にとって細胞膜はアクセスが良く、作用部位の収斂進化により多様性がみられるのかもしれない。さらなる探索研究により、ユニークな化合物の発見と応用が期待できる。

住木・梅澤記念賞 受賞講演

奨励賞 受賞講演
カルバペネム耐性腸内細菌目細菌およびカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌に対するin vitro相加相乗効果の評価 ~抗菌薬併用療法における治療指針の確立に向けた検討~

大神田 敬 先生

(要旨)抗菌薬耐性(AMR)は早急に対処すべき脅威である。既存の抗菌薬を用いた抗菌薬併用療法の基礎的データの構築を目的に、カルバペネム耐性腸内細菌目細菌に対し、in vitroでの検討を行った。(1)2剤併用における抗菌薬併用効果の検討では「国内型」と「海外型」でベースとなる抗菌薬の系統が異なっており、カルバペネマーゼ産生遺伝子の種類によっても有効な組み合わせが異なっていた。(2)2剤併用における殺菌効果の検討を行ったところ、蛋白合成阻害剤(アミノグリコシド系もしくはテトラサイクリン系)とβラクタム剤の組み合わせが最も有効性が高かった。本奨励金で、相加相乗効果と簡易判定法の検討を行い、最終的に抗菌薬併用療法における治療指針の確立を目指したい。

奨励賞 受賞講演

特別講演 新型コロナウイルス感染症パンデミック、これまでとこれから

岡部 信彦 先生

(要旨)ダイアモンドプリンセス号の横浜入港から始まった本邦の新型コロナウイルス感染症は、4月16日に全国への緊急事態宣言が出されたが、7月の再増加では、臨床情報の蓄積と臨床経験、治療情報に加えて人々の認識の高まりなど、3~4月の流行の「数」から7~8月の流行では「質」への変化がみられてきたため感染者数は上回ったものの緊急事態宣言は出されていない。秋から11月には急増し現在に至っているが、自治体によって状況に差がある。日本では、クラスター対策に着目し、さらに三密対策を一般に呼びかけ、かなり受け入れられた。しかし年末年始を迎え流行拡大が危惧される中、感染リスクが高まる「5つの場面」(1)飲酒を伴う懇親会等、(2)大人数や長時間におよぶ飲食、(3)マスクなしでの会話、(4)狭い空間での共同生活、(5)居場所の切り替わりについてあらためて注意喚起が行われた。患者が二次感染を生ずるのは5%程度で、無防備の濃厚接触の場合である。買い物などですれ違った場合は0.6%とほとんどうつらず、インフルエンザほどの感染力の強さではない。潜伏期間は平均5日程度、発症から7日前後で2割ほどが肺炎を併発するが、8割は軽症で回復をする。アンギオテンシン変換酵素2(ACE2)が小児では少なく、小児の感染者数の低さの説明になるのでは、という論文がある。コロナウイルスワクチンに関しては、現在200以上のくらいの候補があり、国内開発も行われている。現在の感染拡大を鎮静化させるための分科会から政府への提言を11月25日に行いその概要も紹介した。

岡部 信彦 先生