Vol.75 No.3

PDF閲覧にはIDとパスワードが必要です。

The Japanese Journal of Antibiotics
Vol.75 No.3 September 2022

◆原著

Vancomycin resistant Enterococcus spp. スクリーニング培地の評価
上田舞衣子・村谷哲郎・朔 晴久
P.45-54, 2022

 VREによる院内感染に関する報告は国内でも多数あり,早期に検出し封じ込める必要がある耐性菌である。Vancomycin resistant Enterococcus spp.(VRE)保菌者が見つかった時や入院時耐性菌スクリーニングとしては,全株分離同定,薬剤感受性試験を行うことは,効率的ではなく,VRE選択培地の使用が有用である。今回,カナダで既に使用されている新しいVRE選択培地である「CHROMagar™ VRE blue (CHROMagar)」(CH-blue)を評価する機会を得たので,既存の関東化学が販売している「CHROMagar™ VRE(CHROMagar)」(CH-VRE)および日本ベクトン・ディッキンソンの「BD BBL™ VRE選択培地(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)」(BD-VRE)を対照として,各種検討を行った。vanA, vanB, vanDを保有する153株おびそれらを保有しないEnterococcus gallinarum 25株,Enterococcus casseliflavus 25株を含むwild type 114株の計267株を用いた。これらの菌株は,ミスラ法に準じた方法で血液寒天培地,CH-VRE, CH-blue, BD-VREの4種類の培地を用い菌の発育を評価した。
 感度は外来性VCM耐性因子vanA, vanB, vanD保有株を検出できるか否かとし,特異度は外来性VCM耐性因子を有さない株(vanC保有株を含む)を検出しないこととした。108 cfu/spot では3種類の培地とも感度97%以上,106 cfu/spot では93%以上であった。103 cfu/spotでは少し感度は落ちたが,82.4~85.0%であった。特異度は,CH-blueは106 cfu/spotでも100%であり,CH-VREの83.3%,BD-VREの99.1%よりも優れていた。103 cfu/spot では,CH-blue およびBD-VREの特異度は100%であったが, CH-VREは92.1%であった。カナダでは既に使用されているCH-blueは,現在使用されているCH-VREと比較して,VanC型の発育を阻止するという点において,明らかに優れていた。また,CH-blue はVCMのMICが低いvanB 保有E. faecium に関しては,106 cfu/spotでの検出感度は,CH-VREよりは劣るものの108 cfu/spot では同等であり,臨床現場で使用するには優れた培地であり,BD-VREと同等の性能を有する選択培地であると考えられた。

◆研究報告

急性期病棟におけるタゾバクタム・ピペラシリンによる薬物性肝障害リスク因子の探索
雨宮貴洋・鈴木洋史
P.55-61, 2022

 タゾバクタム・ピペラシリン(tazobactam/piperacillin, TAZ/PIPC)は急性期病棟で人工呼吸器関連肺炎等の感染症に対して,起因菌が同定されていない初期段階の経験的治療において第一選択薬として使用されるが,薬物性肝障害(drug-induced liver injury, DILI)の発現頻度が比較的高いことが臨床上の課題となっている。本研究ではTAZ/PIPCによるDILI発症リスクを上昇させると考えられる背景要因を患者情報から抽出し,投与開始前の段階でDILIリスク因子を同定することを目的とした。急性期病棟でTAZ/PIPCの投与が開始となった患者をレトロスペクティブに抽出し,年齢,性別,投与量,投与期間および投与開始直前の臨床検査値Albumin(Alb),Blood urea nitrogen (BUN),Creatinine (Cre),Sodium (Na),Potassium(K),Chloride(Cl), Aspartate aminotransferase (AST),Alanine aminotransferase (ALT),Total Bilirubin(TBil),Lactate dehydrogenase (LDH),C-reactive protein (CRP),White blood cell (WBC),Red blood cell (RBC),Hemoglobin (Hb),Hematocrit (Hct),Platelet (PLT)に関して,DILI発症患者とDILIを発症しなかった(Non-DILI)患者間で単変量解析および多変量ロジスティック回帰分析を行った。その結果,男性においてTAZ/PIPC投与開始前のCRP(オッズ比:1.118, 95%信頼区間:1.037–1.206, p = 0.004)とRBC(オッズ比:1.017, 95%信頼区間:1.002–1.032, p = 0.030)がDILIリスク因子として抽出された。これらのリスク因子が高値を示す患者においては,他の薬剤を用いた治療の可能性を考慮するとともに,TAZ/PIPCを投与する場合には,より緊密な肝機能検査値のモニターを行うことでDILIの発症,重症化を未然に防ぐことに繋がると考えられる。